〜ヤスさんより〜
   
 


 





【まえがき】

 熱心なセブ・ファンの方には叱られそうですが、実は今回のセブ行きは、「安く行けるのはセブしかない」という不純な理由のみで決めたのでした。というのも、今夏、女房と「久しぶりに、ダイビングを再開しよう!」と決意したまではいいのですが、前回のダイビング(タイ・サムイ島)から4年も経過しており、近場でのリフレッシュダイブや機材オーバーホールに、かなりの散財をしてしまったのです(知らない間にゲージが2台とも水没してたのも痛かった)。家計はピンチ!でも南の島には行きたい!そんな時、目に留まったのが、航空券だけなら5万円台前半で行けるセブ島。しかも、このサイトによって得た貴重な情報によれば、物価も安いらしい・・・。飛行機は8日前、宿の予約は出発前日と、ドタバタの中で出発しました。結婚以来、旅行はほとんど南の島。島大好き夫婦のセブ島初体験。話は細かい点にやたら執着しますが、「後の人に何か役立てば」と書きつづってみました。

 

【0日目(出発前日)】

 初の試みとして、旅行代理店が出している「前・後泊パック」を利用し、出発前日に関空の対岸・泉佐野に宿泊した。がんばって1週間休みを取ったのに、急に行き先を決めたため、直行便スケジュールの関係で5日間の旅行になってしまった腹いせ≠ナもある。
 家から関空までは1時間半ほどなので、前泊はまさに無駄。しかし家から車で出発し、ホテルの駐車場に放り込んでおけるのは大きなメリットだ。ホテルからは無料シャトルバスも利用できる。「ホリデイ・イン」「ワシントン」クラスなら、2人で1万3000円程度。しかも駐車サービスは約1週間付き。前・後泊プランは本来、旅行代理店でパックツアーを買う遠方客向けのオプション商品だが、もちろん誰でも購入できる。
 泊まったのは、「ホリデイ・イン関西空港」。設備じたいは、世界チェーンでもあり普通だが、全くの住宅街の中にこつ然と立つ立地は「??」。南海泉佐野駅から徒歩7、8分と若干遠く、それがあとで致命的なネックを招くことになる……(←大げさ)。
 夕食は、泉佐野在住経験のある先輩のアドバイスで、泉佐野駅近くの寿司屋「とも八」へ。泉州名産水ナスを前菜に、シャコの酢のもの、ガッチョ(コチの仲間)のから揚げなどなど、「地もの」をあさって、2人で6600円と安い。ほろ酔い加減の幸せな気分でホテルに戻ると、会社の雑事なども少し忘れ、気分が軽くなる。明日は楽しく旅立てそうだ!

 

【1日目】

 関空発PR427便。待合ロビーを見回しても、革靴とかアタッシュケースの人は1人もいない(あくまでも私の見た範囲)。かといって、ハワイ便とかにいそうな、ハイソなド派手ファッションの人もいない。要するに、みんなフツーの格好なのだ。肩の力をぬいてリゾート。なんかいい感じだ。
 機内で前の席に座った家族連れは、お父さんが日本人、お母さんがフィリピン人らしく、子どもは目のくりくりっとした、色の黒いかわいらしい男の子。夫婦で眼鏡をかけている私たちを見て「兄妹みたいやナー」とか屈託なく話し掛けてくる。
 エアバスA330の機体は新しく快適だが、SQなどと違い、エコノミー席の個人ビデオまではない。機内でいただいたビール「Beer na Beer」(サンミゲルの対抗銘柄と思われる)を飲みながら、「あと数年もすれば、航空機内でもインターネットに接続できたりするようになるんだろうなー」とか「でもそんなのはビジネスクラスとかだけで、自分たちには関係ないって」などと、独りツッコミの黙想をしながら、少し居眠り。機内食はいろいろ言われているが、やはり「なんともいえない味」(←昔「食いしんぼう万歳」で宍戸錠が論評に困ったときによく言っていたというフレーズらしい)。パンチのない味のチキンor甘いソースの鮭フライが選べたが・・・。時計の時刻を1時間遅らせ、到着を待つ。
 

◇  ◇

 セブ・マクタン空港到着は午後6時過ぎ。目的地のリゾートは「セブ・ビーチ・クラブ(CBC)」。送迎はない(もちろん有料で依頼できる。頼まなかったのは単に興味本位)。早速、タクシー探しや両替を始めなければならない。イミグレーションを経て到着ロビーに出ると、なんだなんだ?フロアがやけに暗ーい。そして狭い。勝手に南国ホンワカムードを想像していた私たちは、ちょっと身構えた。
 クーポンタクシーのカウンターとか、観光案内が見つけられないまま、まずは両替カウンターへ。比較的大きな銀行の窓口には、「1万円=3700円」を示す表示があり、日本人観光客の列。その左には、小さな銀行の窓口があって、その前でアロハシャツを来たオッチャンが「ここもオナジ!レートオナジ!」と叫んでる。並んでいる人が少ないので、そちらへ並んでみる。そこでは、そのオッチャンがぶっとい札束を抱え、馴れた手つきで「1万円?はいよ、3700ペソ!」とばかり、現ナマを手渡してくる。おいおい峠の釜めし屋かアンタは。レシート等もなし(別にレシートなんかいらないけど)。こうして当座の資金3700ペソを手にする。
 そのままふらふらと、建物の外へ。「まっ、外でタクシー探そうや」と私。「大丈夫?」と妻。後で考えると、両替カウンターの右奥に回り込めばタクシーなどのカウンターがあったのだろうか・・・。歩道では、当然のごとく、客引き風が「タクシー?」とか聞いてくるが、遮二無二食らいついてくるような感じでもなく、平和的な雰囲気でホッとする。しかし、肝心のタクシーがほとんど路上にいない。国内線の辺りまで歩き、道を渡った「タクシー乗り場」で待つが、土曜の夕刻のためか、タクシーは来ない。
 「まいったなー」。焦り始めたところに、やせて茶色いシャツを着たアンチャンが「上階にならタクシーあるよ」と話し掛けてくる。変なところに連れて行かれてはカナワン、と身構え、「上まで荷物重い、タクシー待つ!」。言ってはみたものの、週末の夕方のためか、タクシーはいっこうに来ず、根負け。アンチャンは重たい2つのスーツケース(計45キロあるのだ)を抱えつつも、うれしそうに階段を登っていく。
 上階に上がると、そのアンチャンは単なる客引きで、運転手は丸刈りの竹中直人風であることが判明。要はレンタカーの運転手が、空いた車でタクシーをやっているってこと(どうも、クーポンタクシーも同じ方式らしい)。客引きアンチャンとは150ペソで話がついたのに、竹中直人は改めて、350ペソとか300ペソとか言ってくる。あららー、またやり直しかよ!。いったん荷物をトランクに積んだが、ここは仕方なく「じゃあええわい、荷物下ろせ」とトランクを叩いたり、まあいわゆるお決まりの交渉を実施。面倒でもあり、短いやり取りの末、170ペソで手を打つ。ようやく出発しようとしていたら、別の客引きが、「タンブリ・ビーチ」(目的地の隣のリゾート)行きのカップルを連れてきて、同乗することに。竹中直人は「じゃあ、150ペソでいいよ、OKOK」と急に上機嫌になる。あまりの現金さに、逆にこちらも笑えてくる。竹中直人の顔に「今夜は一気に2組ゲット!俺はついてるぜムフフ・・・」と書いてあるのが見える。
 後で聞くと、私たち2人は150ペソ、あとの2人は120ペソで乗車していた。私たちは初めから「空港からリゾートまでは150が相場」という話が頭にあり、250とか持ち掛ける客引きアンチャンにハナから「150でええやろ」と持ちかけたのが敗因≠セったのかも。もっとも、30ペソ=約80円。マジに悔しがるのも大人げない気もする。ただ、我が方は情にほだされて、客引きアンチャンにもチップをやったので、少し高い乗車になったことは否めない。
 途中の道はいかにも暗く、素朴な島の雰囲気が伝わってくる。路傍にはサリサリストア(よろずや)が点在し、子どもや青少年が楽しげにたむろしている。石油ランプの明かりの下でオヤジたちが談笑している姿も。車中で聞くと、もう1組のカップルは、過去にサムイ島などを訪れ、島が大好きとのこと。同じような趣味の人が同じタクシーに乗り合わせたわけで、縁を感じつつあれこれ話す。「サムイは昔は本当によかったけど、最近はプーケットと同じになちゃって・・・」。妙に盛り上がってしまう。
 CBCの入り口には、ごっつい制服の警備員がいて、ボードを手にしながら竹中直人に「予約あるか?」などと尋ねている。私が後ろの窓を開けて苗字を叫ぶと「OK!」。セキュリティー的には安心を感じさせる。メインエントランスは椰子の葉葺きのエキゾチックな雰囲気。チェックインをすると、ウェルカムドリンクのサービス。比較的安価な宿だが、「やるじゃん!」と感心する。
 私たち以外にも、ディスカウント航空券で有名な会社のツアーの人たちが現地ガイドに連れられて到着したりと、レセプションはにぎやかになってきた。客はほとんど日本人のようだ。レストランの方を見やると、席では5人ぐらいの生バンドが南国シャツを着てビートルズの曲とかをやっている。日本人の家族連れが、バンドに囲まれている。気弱な僕としては、メシ食ってる横で「貴方のために」とかいってジャカスカ演奏されるのはちょっとビビルなー。その家族連れも恐縮して聞いているように見える。
 部屋の配置は、ビーチと直角に連棟形式の平屋の客室が2列並ぶ形。その連棟の間に、ジャングルをイメージした大きなプールがある。だから部屋はすべてプールに面している。敷地がそんなに広くない分、ビーチ〜プール〜レストランとサンダルでペタペタ行き来できる。
 部屋の中にはシングル級のベッドが2つと、壁埋め込み式の四角いクーラー(音はでかい)。テレビ、電話付き。国際電話もダイレクトに発信できるが、残念なことになぜか国内電話がダイレクトにつなげない。いろいろ試したが交換機の仕様らしく断念。確かに「国内電話は交換手経由で」と表示してある。これでは現地プロバイダーにローミング接続できないナー(私はニフティの会員)。コンセントの型は日本と同じで、電圧は220V。バスルームに1つ、110Vのがあったが、これはアダプターが必要な形。ちなみに冷蔵庫はビール50ペソ、リポビタン70ペソ、コーラ35ペソ、地元ミネラルウォーター25ペソ、エビアン120ペソといった具合。
 到着するとすぐ、日本で大まかな予約をしていたダイブショップ「PSQダイバーズ」から電話。明日はカビラオ島方面に行くのでぜひ参加を、とのこと。到着と同時に電話があるとは、ホテル併設のダイブショップはやはり便利。
 小腹が空いていたので、レストランへ。ビーフのスペアリブ180ペソ、サラダ120ペソ、スパゲティ130ペソといったとこ。もちろんロブスター300ペソ以上とかゴージャスな献立もある。だが、まずはケチケチ作戦で。マンゴジュースとか、ビール(35ペソ)を3本ほど飲んで、サービス料とかも付いて600数十ペソだった。コースディナーも頼むことができ、それは1人US$10。
 せっせと食べていると、例の生バンドは我がテーブルにも近づいてくる。私「おいおいおい、来ちゃったよー」(←名古屋章の物まねで)妻「わー恥ずかしいー、どうしよー」。バンドはまず、カーペンターズを演奏し出す。さらに「リクエスト〜?」とか聞かれるので、「フィリピンのを」と注文する。2曲聞いて20ペソをチップとして手渡す。今日は結構テーブルが埋まっていて、みんな困惑しながらも2、3曲でそれなりのチップを渡しているよう。なんだかありがたいような恥ずかしいような変な感じだが、フィリピン歌謡などを聞きながらサンミゲルをあおるのも悪くない。慣れればリラックスしながら演奏を楽しめるに違いない。
 ところで、レストランの味だが。「スパゲッティ・マリナーラ」は、昔給食で出たあの「ソフト麺」風のパスタに、甘辛ケチャップあんかけ味ソース。スペアリブバーベキューも、肉や焼き方は悪くなく、しかし味はやはりそれ系。なにごとも甘い。逆にマンゴジュースは濃厚で、本場の味といった感じ。妻は「おいしー」と大喜び。でもまあ、パスタにはパン、肉にはご飯がついてきて十分満腹になったし、椰子屋根の下で夜風を感じながら食べる夕食はお金には換算できないという考え方もあるし。
 部屋に入る前、フロントに「蚊取り線香アルカ?」と聞いたら「蚊取り線香ナイが、ルームサービスでスプレー、アル」とのこと。キンチョールでもくれるのかなと部屋で待っていると、間もなく従業員の兄さんがやってきて、「沢山?」とか聞きながら、部屋の隅々に殺虫剤をまいて、さっさと帰っていった。爆笑をこらえつつ10ペソのチップを渡す。

 

   
   

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